episode 13

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どれだけ強く抱きしめたって、どうしてもこれが夢としか思えない。 それくらい長かった片思いがこんな急に終わるなんて、考えもしていなかったのだから。 「……柴垣くん……ねぇ……」 戸惑いがちに三崎はもぞもぞと腕の中で動いているが、その感触がまた可愛らしくてたまらない。 感触を感じれば感じるほど、これが現実だと実感できて。 一生抱きしめていたいとさえ思った。 「……ちょ……柴垣くんっ」 「うるさい」 何とも言えない感情を実感してるところなんだよ。 とはいえ本当にずっと抱きしめているわけにもいかず、俺は不満満載で腕を解いた。 「信じられねぇ、この結末。今までの俺の苦悩も今日1日の葛藤も。全部津田さんの掌で転がされてたって事かよ。つーかなんなの津田さん。お釈迦様かよっ」 付き合ってると言ったのも、家に来ると言ったのも、あの挑発も全部。 津田さんのお膳立てというわけだったのか。 「それもこれも……」 全部俺が情けないせいなんだ。 だけど。 片手でついっと三崎の顎を掬い、俺はキスするくらいに近さで三崎と視線を合わせた。 「全部お前が悪くね?」 「え?」 いや、本当は全部俺が悪いんだけど。 ただ一つだけ、いつも思っていたことがあるんだ。 「お前がアノ時、ちゃんと俺を受け入れてれば……」 「アノ時……?どの時?」 「うわ、マジかよ。お前の中で本当に無かったことになってんのか」 「……あ」 やっと思い出した『アノ時』 「今ココで再現してやってもいいけど?」 「あっ……」 そう言ってもう一度唇を合わせようとした瞬間。 「やめてくれます?ここ会社なんで」 妙に冷めた声に凍りつき、俺達は慌てて距離を取った。
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