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「何が社内恋愛推奨企業だ。バカ」
朝一番で津田さんに呼ばれた私と柴垣くんは、恒例となった小会議室で津田さんと向かい合わせに座り、小さくなっていた。
「朝からお前たちのことで大騒ぎだ」
やはり……というか、当然というか。
私達が手を繋いで出勤していたのを、たくさんの社員が目撃したらしく、朝の十分、十五分であっという間に噂が広まったらしい。
「三崎さんは皆の憧れの人だからな。男どもの落ち込みようは笑えるよ」
津田さんは少し悪そうな表情で笑う。
「ま。俺の方が落ち込んだけど。問題はそこじゃない」
さり気なく自分の落ち込みをアピールして、津田さんは表情を引き締めた。
社内恋愛禁止だとは聞いたことなかったけど……何かあったのだろうか。
心配になって曇らせた表情に気付いた津田さんは、私を見てニコリと笑った。
「問題なのは柴垣だよ」
「俺ですか?え……なんで……?」
前のめりになった柴垣くんを冷たい目で見つめる津田さんからは、何か威圧的なものを感じる。
津田さんの言葉の先を早く聞きたいけれど、それを促せる雰囲気ではなくて。
私は柴垣くんを不安げに見つめて津田さんの言葉を待った。
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