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津田さんは堅い表情を変えることなく、大きな溜め息を一つついた。
「津田さん。もうハッキリ言ってくれませんか?」
痺れを切らした柴垣くんが口を開いた。
「何がマズいことなのかは分かりません。でも言って貰わないと対処のしようもありません」
強くハッキリそう言った柴垣くんに、津田さんは「そうだな」と一言漏らした。
「柴垣。問題なのはな、お前の今後のことだよ」
そう言って津田さんは二回目の溜め息と一緒に手のひらで表情を隠した。
浮かれていた私達の知らないところで、また何か動いているというのか。
そう思うと私の胸は痛みだす。
せっかく柴垣くんと二人で幸せな日々を送れると思っていたのに。
一気に暗雲が立ち込めて、あっという間に私達を飲み込もうとしている。
それがとても恐ろしくて。
私は俯いて膝の上でぎゅっと握り拳を作った。
「俺の今後のことって、何なんですか?……もしかして……」
柴垣くんの声色からは緊張が感じ取れて、私は思わず身構える。
「また転勤……とか……?」
その言葉に全身の血の気がひく。
有り得ない話じゃない。
思わず津田さんを見つめると。
「……く……」
手のひらで表情を隠した津田さんの肩がピクリと揺れた。
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