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一緒に会社を後にするなんて初めてで、私の右側は微かに熱を持っているような気がする。
さりげなく左に寄せてくれて歩幅を合わせてくれる柴垣くんはスマートだ。
昼間の楓と沙耶ちゃんの会話を思い出して、そういえば気持ちが落ちていたことを思い出した。
柴垣くんは自分のファンクラブが発足されたなんて、きっと知らないよね。
満員電車の朝とは違い、ゆったりとシートに腰を下ろすと、柴垣くんも隣に陣取った。
電車が揺れるたびに微かに触れる肩に、私の心臓はいちいち反応を見せる。
せっかくの柴垣くんとの会話も、あまり頭に入らないほど意識してしまっている。
まさか私…柴垣くんのこと…。
「じゃ俺、ここで降りるけど。お前一人で大丈夫か?」
その言葉でハッと我に返ると…。
「…私の最寄駅も…ここ…」
二人で顔を見合わせると、クスッと笑って電車を降りた。
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