episode 1

5/34
20286人が本棚に入れています
本棚に追加
/527ページ
彼と別れて心が欠けたとしても、寸分違わず日は昇る。 虚しさに涙した後、腫れぼったくなるだろうとアイシングして眠ったけれど、やはり瞼は僅かに腫れていた。 28にもなると、皮膚の回復力も衰えてくるらしい。 隠すように明るめのメイクを施せば幾分はマシな気がした。 いつもよりも高めのヒールを履いてカツカツと音を響かせると、丸まっていた背中が伸びてすっかり日常が戻ってきた。 一等地に自社ビルを構え、大まかに分けて企画、営業、物流と、すべての部門を兼ね備えた社内はお洒落に纏め上げられていて、取引先からもさすが一流企業と言われている。 エレベーターで上りフロアに出てすぐの部署、営業2課が私の所属先だ。
/527ページ

最初のコメントを投稿しよう!