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改札を出ても、駅を出ても足の向く方向は二人一緒で。
「柴垣くん、もしかして送ってくれてるの?」
思わずそう聞いたほどだ。
「んなわけねぇだろ。残業なんて日常茶飯事なんだから、この時間で送ってたらこれから毎日送らないといけねぇじゃん」
「だよねぇ…」
まぁ、大した期待なんてしてなかったけど。
けれど女心は勝手に落ち込んでしまったり。
それでも柴垣くんとのこの時間は、私の心を浮上させるには十分だった。
「柴垣くんちって本当にこっちなの?」
もういくつもの曲がり角を通過し3つの曲がり角を曲がったけれど、未だに私と柴垣くんは並んで歩いている。
「お前こそ俺に持ち帰られるつもりかよ」
「そんなわけないでしょ!」
咄嗟に反論すると、柴垣くんは意地悪そうな笑みで笑い飛ばした。
「そこの角を右に曲がればウチ」
「…うそ…」
ウチだって…右に曲がればすぐなんだけど…。
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