1.鍵の開いた部屋

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 そもそもここは二階だ。よっぽどの根性と運動神経がない限り簡単には入ってこられないだろう。 「ちょっと不思議じゃないですか? 部屋に入って、窓を開けて、急いで出ていったってことでしょうか?」  「そうなるね。そんなに不思議?」 「私、こういう、細かいところ、気になっちゃうタチなんです。わからないぞ、って直感が言っているのに、先に進むのが気持ち悪いんです。勉強でもそんな感じなので、少しでもわからないところがあるとずっとそこで悩んじゃったりして。だから要領わるいんです、私」  そうこうしているうちに疑問を解消したい欲求がむくむくとふくらんできてしまい、気付いたら私は部屋の中をくるくる回って誰かが居室に隠れていないか調べ始めていた。けど人影なんてどこにもない。私たちがこの居室を空けたのはほんの数分程度ということを考えれば、やはりほとんど滞在せずに鍵だけ開けて出ていった、ということになる。どうして? 本当に鍵をかけ忘れて出ていっただけ? 「あれ? でも待ってください。もう一人の先輩は今日来られないんじゃありませんでしたっけ? なにかの用事ですか?」 「ああ、うん。そうだったね。ええっと、なんだったかな……」 「ますます可笑しいじゃないですか。先生も韓国におられるという話ですし、仮にその先輩も今日ここにこられるような状況にないのだとしたら、鍵を開けることすら不可能ってことになりますよ」 「確かにそうなるね」  私はない頭を使って考えた。  鍵は三本。うち二つの所有者はこの居室にこられる状況じゃないという。ということは……。 「先輩、そこをどいてください。もう一度窓を調べます」 「え? もう調べたし、必要ないと思うけど」  私はダンボールの山たちの間を縫って、窓の前で寒そうに背中をまるめている日向先輩のもとに寄った。 「どうしてですか。私たちが居室を空けたとき、ここの窓は開いていた。日向先輩の私物を狙って、何者かが外から侵入したとも考えられます。というか残された可能性はそれしかありません」
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