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「飼っているんですか?」
「うん。そのダンボールがコイツの家な」
ナノ先輩は、こたつのすぐわきに置かれているダンボールを指した。これまで数多のダンボールにまぎれていて気付かなかったが、確かにそのダンボール箱の中には猫がくつろげそうなもこもこした毛布が敷かれているし、手前の表面には「ニュートンの家」とポップな字体で書かれている。だが不可解なのは箱の中を二分割するように置かれた「しきり」だ。
「ナノちゃん先輩、どうして、しきりがついているんですか?」
「ナノちゃん先輩って」
一瞬しまった、と思ったが、下げて上げられた先輩は「まあ先輩ついているしいっか」と、特に怒る様子もない。複雑そうな顔のナノちゃん先輩。日向先輩みたいなのがもう一人出てきたらどうしようかと思っていたけど、こんなにかわいい先輩がいてくれるなら私の憂鬱度もきっと半減だ。
ナノちゃん先輩はニュートンをいっぽうのスペースにニュートンを入れると、ぱたん、とダンボールのフタを閉じた。
「これで、フタを開けて観測するまでは、どっちにいるかは確率でしか表せないってね。へへ、量子っぽいだろー」
「な、なるほど……」
量子力学の粒子の波動性を表現したいがためにしきりをつけたってことみたいだけど、マクロなニュートンからしたら部屋が単に二分割されて迷惑なだけだろう。
「先輩は外で何をしていたんですか?」
「この仔とお昼寝。外でレジャーシート広げてな。よくやるんだ。でもちょっとウトウトしてたら、開放していたはずの窓が閉まってるんだもん。なにごとかと思ったよ」
「でも日向先輩、もう一人のお方は今日用事で来られないと……」
「私だって今日、四年生が来るなんて聞いてねえぞ。説明しろ日向」
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