1.鍵の開いた部屋

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「ニュートンを拉致して、私の原付ん中に隠したのはお前だな、日向。そうやって私にニュートンを探しに行かせて居室から遠ざけて、自分は四年生と仲良くしていたってわけだ。目的は椎奈の下着の盗撮。ダンボールをまたぐところを、ダンボールの影に隠した携帯のムービーかなんかで撮っていたんだろ。つまりこの紙類やダンボールは撮影機器を隠すためのカムフラージュ。でも思ったよりも早くニュートンを見つけてしまった私が居室にきちまった。偶然にもお前らが居室を空けているタイミングでな! 椎奈より先に、外でニュートンと昼寝している私を見つけたお前は、鉢合わせを避けるために窓を施錠し、ブラインドを落とした。こんなふうに矛盾を指摘されて、証拠を私に押収されないように、だろ。こんなトラップを見抜かない私じゃねーからな!」 「あはは、正解だ! つまらない現象だったね」 「おめーが言うな!」  ナノちゃんが見事な推理を披露しているあいだに仕事を終えたニュートンが、口にスマホを加えて主のもとに持ってくる。よしよし、良い子だ。と、優秀なしもべから悪事を働いた機械を押収すると、彼女はその賢い頭を優しく撫でた。  スカートの中を狙われるという被害を受けた私ではあったけど、どこか嬉しい気持ちだった。それはもちろん私にマゾな気質があるからとかじゃなくて、どうせトラウマをつくる場所にしかならないと思ってびくびくしていたのに、こんな人たちがいるならもしかしたら楽しくやっていけるかもしれない、と恐怖でしかなかった研究生活というものに対して若干の希望が持てたからだ。 「つーかオメー、こんないやらしい下着つけてんのかよ……」  日向先輩の仕込んだカメラは私の恥ずかしい部分をばっちり収めていたらしく、ナノちゃんが押収したスマホの画面を汚物でもみるような目つきで眺めている。もう、なにを履いてもいっしょでしょ。なに履いたっていいじゃない。そんな反発心やら自己肯定が芽生えもするけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。  私は叫んだ。 「け、消してください!」
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