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「私は今からニュートンのエサやりと昼寝だ。私も週間レポート出したいから様子見て来いよ」
「そうじゃなくて、別に迎えに行く必要性があるとは僕には思えないよ。死んだわけじゃあるまいし。無駄足になったらイヤだし。むしろ用があるなら君がいくべきじゃないか猫姫よ」
「うるせえッ。無駄足になったらイヤなのはこちとら一緒なんだよっ。洗濯の件は不問にしてやるからさっさと行ってこい」
「えー」
なんだかなあ、と日向先輩はぐじぐじと色素が薄くてぼさっとした髪の毛を掻きながら立ち上がる。観念して、流血して倒れているという噂の先生の迎えに上がるかと思いきや、先輩はいきなりズボンを下ろして足を悪くしたうちのおじいちゃん並みに肉のない弱弱しい脚をあらわにした。そして今度はよれよれのシャツのすそに両手をかける。
「な、なにしているんですか」
先輩がパンツ一枚の姿になる前に、思わず目を逸らして言う。
「なにって、着替えているんだよ。外に行くのに部屋着じゃみっともないじゃん」
これが日常だからかなんなのか、ナノちゃんは「ちっとは肉つけろよーこのままじゃ三年後は人体模型として小学校からスカウトくるぞー」とか意味のわからないことを言っている。そして「ほっせぇなあ、これじゃー腰ふれねーだろー、どの道女いねーかー」「ナノちゃんが相手してくれてもいいんだよー」「死ね殺すぞ」などと言いあっている。私は目を逸らすしかない。
「まあ、じゃあしょうがない行ってくる」
着替えが終わった頃合いを見計らってそむけていた視線をもとの位置に戻すと、上下ともに派手なピンク色のジャージ姿の先輩と目が合った。にこ、と言動の全てを改善しさえすればイケメンの評価が得られるに違いない美形が微笑んでいる。部屋着と一緒じゃないかと思ったが、また着替えられても困るのでこの際なんでもいい。
「安かったんだ、このジャージ。上下合わせて三百円。ちょっと派手だけどさ」
言っておくがちょっとじゃない。
*
「で、なんで私も一緒なんですか」
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