3章 昭和58年7月

14/16
前へ
/545ページ
次へ
そして一緒にその罠をはずそうと力をあわせるが、 トラバサミはびくともしなかった。 今絵津浩一の脳裏に刹那に浮かんだのは、 地元の猟師がイノシシかシカ用に しかけた罠なのだと思ったことだ。  「こんなところに罠なんか仕掛けやがって! 訴えてやるからな」 今絵津浩一は半泣きになりながらも、 トラバサミをはずそうともがいた。 右足の感覚が徐々に失われていくのが感じられる。 鴨永美代子もそれを手伝うが、 女性の力で何とかなるようなものではなかった。
/545ページ

最初のコメントを投稿しよう!

460人が本棚に入れています
本棚に追加