3章 昭和58年7月

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「もういい!オレがやる!」 苛立った今絵津浩一は、つい彼女を突き飛ばした。 鴨永美代子は小さな悲鳴を上げて、地面に転んだ。 その際、手をついた彼女の腕に何かが触れた。 何か細い糸のようなもの。 それと同時に、カランという乾いた音が、 どこからともなく聞こえた。 「今の音、何だ?」  今絵津浩一もそれに気付いて、 一瞬、トラバサミから手が離れた。 次の瞬間、何かが風を切るような音がした。 何かが飛んでくる―― そう直感した彼女は、とっさに頭を抱えた。 そして何かが刺さるような、鈍い音が近くで聞こえた。 近く――前からだ。今絵津浩一のいる場所からだ。
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