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「次に、幸福なお婿さんの発表に移りたいと思います。」
「えっ!?」
委員長の言葉に、わたしは思わず驚きの声をあげてしまった。
「美月さん?どうしました?」
「い、いえ‥。何でもない‥です。」
うぅ‥ボーとしてたから全然聞いてなかった‥。やだな‥誰が選ばれるんだろう‥心臓がドキドキしてきた‥。
不安な気持ちを噛み締めながら、委員長の言葉を待った。
「それでは発表です。厳選なるくじ引きの結果‥“真咲蓮”くんに決定しました!」
『えっ!?』
思わず真咲くんと声が被り、お互いを見合ってしまった。わたしは恥ずかしさのあまり、慌てて視線を逸らす。
ま‥まさか‥、真咲くんが相手だなんて‥。
そりゃ‥全然交流がない人と組むよりはやりやすいかもしれないけど‥。
さっきとは別の痛い視線に身が縮まる思いがした。
(学園一のアイドルとイベント上とは言え結婚するなんて‥、うぅ‥視線が痛い‥。)
「マジか‥。」
え‥?
「‥‥‥。」
???今‥克己くん‥何か言ったような‥。
気のせいかな?
***
(はぁ~‥)
あの後、大騒ぎだったな‥。
ホームルームが終わったとたん、真咲くんはファンの女の子達に囲まれるし‥、わたしは睨まれるし‥。そしてこの雨‥。
昇降口の低い屋根の隙間から見える雨空を眺めながら、もう一度ため息を出す。
「傘‥持ってくればよかったな‥。」
朝はあんなに晴れてたのに‥。
「神奈。」
突然の後ろからかけられた声に、わたしは振り返る。
「真咲くん!ファンの女の子達、もう大丈夫なの?」
「まぁ、なんとかな。」
「ごめんね。助けてあげられなくて‥。」
いつもだったら、助けてあげられるのに‥、今回はわたしも当事者だし‥よけいにゴチャゴチャになりそうな気がして‥。
真咲くん‥困っていたのに‥。
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