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?「此度の昇進、誠におめでとうございます。」
王宮を歩いていると、いきなり後ろから声を掛けられた。
この王宮において、自分を知っている者であれば簡単に声をかけようとはしない。してはいけない。こちらと立場が同等か上でなければならない。今回の昇進を知っていれば尚更―。そんなものはこの世でほんの一握り。
ばっと帯剣している剣を抜きながら後ろを振り返り自分に声をかけた者の首に向かって刃を向ける。そこには見慣れない服装で、まだ幼さが残っている少女が立っている。
?「…貴様何者だ。俺が何であるか知った上での狼藉か。」
記憶を辿るがこの少女に見覚えがない。
不審人物か。
きつく睨みつけると、
?「あなた様が何であるのかを知り、そのうえで無礼を承知でお声をかけさせていただきました。罰は後程いかようにも。我らが白神アイン・フィーネル様」
少女は剣を向けられながらも顔色を変えず、裾を持ちながら優雅に腰を折り頭を下げる。首がうっすら切れ、血が流れようとも。
下手をすれば深手を被いそうな少女の行動に動揺してチャキと少女から少し剣を離すが完全にではない。動揺を悟られぬよう強めの口調で詰問する。
フィ「御託はいい。貴様が何者かと聞いている。」
ネ「名乗りが遅くなりました。…私はジーク・ネルファと申します。」
少女はそのままの態勢で名乗る。
その名前を聞いてようやく思い当たることがあった。
フィ「ジーク・ネルファ…。あぁ、最近神殿に入るという…。」
ネ「覚えていただいて光栄でございます。アイン・フィーネル様。そしてあなた様の御武勇も故郷までかねがね」
フィ「広めようと思った覚えはないが」
ネ「あなた様の統制力に皆目を見張っているのです。それはあなた様だから出来ること…」
その言葉と同時に少女は頭を上げる。
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