蠱惑のレストラン

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扉を開けてホールへ入ると、他の化け物達はまだ食事を続けていた。しかしその姿は先程とは打って変わり、ムカデにカマキリ、アリやトンボ、ハエ等の蟲を擬人化した様な生物達だ。しかし大半を蟲人間が占めるものの、熊や犬などの動物系の生物をも散見された。 食事をしているならば好機とばかりに男は出口に向かって走り、それを見た化け物達は秘密を知ったのではと止めようとしだした。 「邪魔だっ退けっ!」 男は手近にあったテーブルから食用ナイフを取り、闇雲に振り回して牽制しつつ逃げる。 あと少しで出られる!そう思った時、先程の蜘蛛が現れて言った。 「逃がすな!そいつは私の顔に傷を付けやがった!」 それを聞いた客達は、先程までのの食材を丁重に扱おうという雰囲気は喪失し、容赦のない殺す気の攻撃をし始めた。 「くそっ!これならどうだ!?」 上手く攻撃を躱わせずにかすり傷だらけに成りながらも、男はポケットからスマホを取り出し、カメラのフラッシュ機能を使った。 「ぎゃあっ!?」 「うぐぁっ!?」 急激な光で怯んだ隙に、ライト機能で牽制しながら出口へ向かって走る。ふと出口を見れば、自分を店に招いた老婆の姿がある。男がライト老婆に向けるも、老婆は意に介さない。 「(もうだめか……)」 そう男が諦めかけた時、老婆は出口の扉を開け放ち、自身は横へスッと避けた。 「……え?」 一瞬呆ける男に対し、老婆は有らん限りの声で叫んだ。 「何をしてんるだい!早くお行き!」 男は困惑しながらも、光が差し込む出口へと駆ける。その直ぐ後ろで、ブオンッという棒状の物が振り上げられる音が聞こえた。 その音が聞こえると同時、男は外へ向かって思い切り跳躍した。 「逃ガスカァァァァァ!!!」 化け物の声が響き渡り、振り上げられた足が男へと向かって下ろされる。しかし出口へと跳んだ男の方が一歩早く、店の外へ飛び出した。その直後、ズドンッという音が響き、足が床に突き刺さった。
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