お菓子の家

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再び、店内を見渡すとぼちぼちだが、席はある程度埋まっている。自分のようなもの好きが結構いるということだ。外から見えていた溶けている壁はまだ貫通していないらしく、かろうじて壁の役割を保っている。下にどろどろとした液体が見えるが、見なかったことにしよう。 近くにあるはちみつフォンデュなるものを眺めていると、皿が運ばれてきた。案の定、これも砂糖を固めて作ったものである。店員さんの手のひらが、規制がかかりそうな感じになっていた。 「お待ちしました。甘々パンケーキセットでございます。こちらから、屋根のパンケーキ、こちらがはちみつコーヒーとなっております」 では、ごゆっくり というと、店員さんは違う席へと行ってしまった。 さすがにフォークやナイフは金属製...かと思いきや、八つ橋で出来ていた。確かに硬いけども。 慣れない八つ橋の食器を使って、パンケーキに切り込みを入れる。 その切り込みにほどよくとけたアイスとはちみつが入り込んでいく。ほかほかとした蒸気が甘さを含み、その甘さを伝えてくる。出来立ての香りというやつだ。この店で、食べなければとてもおいしいと感じるが、この店でしか食べられないのだから仕方がない。 甘さに胃がやられながらも食べ終わる。当分は甘いものを食べなくていいという特有な感覚に包まれながら、自分は帰宅した。 聞くに後日、あの店は虫の大群にたかられ、廃業になってしまったらしい。いまは、空き地になっているが、時々あの独特な臭いが漂ってることがあるという。
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