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ふと目が覚めた時、男は見覚えのない森の中に立ち竦んでいた。
「此処はどこだ?」
男はポツリと呟いた。返事をする者などなく、その声は鬱蒼と生い茂る草木を僅かに震わせた。
ふと足元へと視線を落とすと、三色に彩られたリボンで飾られた正方形の箱があった。
小綺麗にラッピングされた其れの中身は見なくても知っていた、息子の12歳の誕生日のプレゼントに買ったグローブだ。
「帰らないと、、、」
仕事帰りに息子が欲しがっていたグローブを購入したのは覚えている。しかし、それからの記憶がどうしても思い出せない。
多少頭は困惑しているが森から脱すべく歩を進め始めた。
日の光さえ拒む森の中、行く手を阻む草木やぬかるむ足場。一体どれだけ前に進めたのか、今が何時なのかすら解らない。
男が疲労に足を止めた時にそれは忽然と姿を表した。
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