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「あの、道に迷ってしまったみたいで。ここは何処なんでしょうか?」
男がマスターに話しかけると、珈琲カップを磨く音が止まった。
「まずは一杯だけでもどうでしょう、辺鄙な所にあるもんだから久しぶりのお客様なんですよ」
マスターはそう言うと中央に配置された椅子とテーブルに視線を送る。
どうやら話しを聞くにはなにか注文したほうが早そうだ。男は中央に配置された椅子へと向かった。
男が腰掛けるとギシっという音をたて少し沈む。
まるで自分の為に用意されていたかのように、その椅子は男をぴったりと支えた。なんとも言えない心地よさに疲れが抜けていくのを感じる。
「珈琲を下さい」
男の言葉にマスターからの返事はない。
ただ静かな店内にはすでにサイフォンの煮立つ音が聞こえていた。
暫くするとマスターが珈琲カップを手に男のテーブルにやってきた。
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