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「あの扉に自分の名前を書いたら、この肝試しは終わりだ」
少年は安堵の息をついた。ようやくゴールにたどり着いたのだ。
三人は通路を進んだ。両側の壁には、ぶ厚そうな鉄扉が等間隔に並んでいた。ドアの上には部屋番号の書かれた白いプレートがはめ込まれている。懐中電灯の明かりが横切るたびに「5」「7」「11」といった数字が浮かび上がる。
「ねえ、変な臭いがしない?」
少年が鼻を手で覆った。扉が近づくにつれ、饐えた匂いが強く漂った。
「さあ、業者が捨て忘れたゴミの臭いだろ」
そっけなく答えるカズヤの白い横顔を、少年はちらっとうかがった。なんでカズヤはこの臭いが気にならないんだろう? 潔癖性のカズヤが何よりも嫌う臭いのはずだ。
しかし、そんな疑念も、扉の前まで来るとどこかへ消え去った。
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