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構わずにカズヤが続けた。
「まるで転がってきた野球のボールをつかむように、彼女の手がネズミを捕まえたんだ。ネズミは逃げようと暴れた。でも、じきに鳴き声は止んだ。彼女がそのネズミを食べちまったからさ。言っとくけど、これは作り話じゃないぜ」
少年が眉をひそめた。手が動いた? 死体じゃなかったのか?
「その日から、僕たちは彼女に餌を与えてみることにした。最初はスーパーで買ってきた総菜を近くに置いてみた。用心のために、扉の下にある食器口から、長い棒を使ってね」
足下に懐中電灯を向けた。扉には猫こしのような取り入れ口があった。ただし、食器のトレーを通すのがせいぜいで、人間がくぐり抜けるのは難しそうだった。
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