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「次の日、来てみたら餌はなくなっていた。彼女が食べたんだ、と僕は確信した。そうやって餌をやり続けるうちに、彼女の好き嫌いもわかってきた。好物は肉、特に生の肉が大好きなんだ。それからは生肉ばかり与え続けた。たいそうお金がかかったよ」
少年の目が、床に散乱するポルエチレンのトレーでとまった。スーパーで生肉を売っている白いトレー、それが無数に散乱している。あれをぜんぶ食べたのか?
「そうしたらどうだ。最初は黒こげの木炭みたいだったのに、皮膚が再生し、徐々に肉がついてくるじゃないか! しまいには体毛や髪の毛まで生えてきたんだぜ」
興奮で早口になったカズヤが、いったん呼吸を整えるように間を置いた。
「……覚えているか? 少し前に晴子の飼ってた犬がいなくなっただろう」
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