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幹久が「俺はこれだな」と斧に手を伸ばした。片手で振ると、ぶん、と空気が揺れた。茜は手にしたアーミーナイフをしげしげと眺めた。蜷川はバタフライナイフを開閉させ、華はアイスピックを怖々と握った。
さやかは武器は手にせず、黙って立ち上がった。まだ煙のくすぶっている弘史の死体の傍で膝をつき、落ちていた日本刀を拾い上げると、鈍い光を放つ刀身を眺める。
「あたしはこれでいいわ」
もう床に武器は残っていなかった。火炎瓶と違い、人数分は用意されていなかったようだ。
「あの……僕のは?」
耕太が恐る恐る訊くと、少年が申し訳なさそうに頭をかいた。
「すいません。これでよければ」
遠慮がちに差し出された小さな手には、錆びついたスプーンが握られていた。
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