第一章 11:00PM 城岩ドリームランド

2/37
1299人が本棚に入れています
本棚に追加
/526ページ
* 怖い話 「ぎゃあああ……」  夏の夜空に青年の叫び声が吸い込まれていく。色白で痩身の少年が、ジュースの空き缶を即席のマイクに見立て、額に青筋を浮かべて叫ぶ姿は、シャウトするロックシンガーに見えなくもない。  尻すぼみするように声が小さくなると、その青年、蜷川純一は〝マイク〟を口から離し、大きく息をついた。鼻から滑り落ちたメガネを小指で持ち上げ、うっすら紅潮した顔をキャンピングテーブルに向ける。 「――以上、お化け屋敷の赤いペット、でした」  カセットコンロの上で、食べ残しの焼き肉がくすぶった音を立てた。生ぬるい夜風が吹き抜け、背の高い木の梢がざわざわと揺れた。
/526ページ

最初のコメントを投稿しよう!