第一章 11:00PM 城岩ドリームランド

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 茜の隣には、ジェルを撫でつけた頭がテーブルに突っ伏していた。指先が携帯電話のキーをいじっている。茜に誘われてやってきた南幹久は、最初から今夜のイベントに興味がなさそうだった。あからさまに退屈そうだ。  耕太が視線をさらに右へ動かした。テーブルの上には、紙皿に取り分けられた肉や野菜がほとんど手つかずのまま残っていた。仁科華(はな)は憮然とした顔で黙っている。今夜、肝試しをすると知ってからずっとこの調子だ。  でも、不機嫌そうな仁科さんも綺麗だな。  昨年度のミス・キャンバスと同じ場所にいるというだけで、耕太はそわそわと落ち着きをなくしていた。一般教養で同じクラスなのにこれまでしゃべったことがなかった。今夜は彼女と親しくなる絶好のチャンスだった。
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