第一章 11:00PM 城岩ドリームランド

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 蜷川が肩をすくめた。 「君たちが『お化け屋敷の赤いペット』を知っていたのは承知していたよ。にもかかわらず、なぜ僕がこの話をしたのかわかるかい?」  蜷川がテーブルを見渡す。 「挑戦したんだ。すでにオチまで知っている話でどれだけ人を怖がらせることができるのか。なぜなら、おもしろい落語を何度聞いてもおもしろいように、本当に怖い話は何度聞いても怖い、というのが僕の持論だからだ。今日はそれが実証できたように思う」  口を開きかけたさやかを、蜷川が手で遮った。 「みんなもご存じの通り、僕の怖い話のレパートリーは軽く一〇〇〇を越える。その中でも、『お化け屋敷の赤いペット』は特別だ。心底、肝を冷やす、ベスト・オブ・怖い話だと自負している。まあ、僕の好みでは『赤いタペストリー』も捨てがたいがね」
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