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* 三分
雨宮耕太は業務用の冷蔵庫を思わせる大きな扉の前に立っていた。
顔の高さの丸いガラス窓から見える室内は、小学校の理科室に似ていた。広い部屋の四方を白いタイル壁が取り囲み、壁に頭を向けて金属製のトレー(恐らく解剖台だろう)が左右に四台ずつ置かれていた。
「誰もいないみたいだ……ひっ!」
言っているそばから耕太は窓から飛びのいた。
どこから現れたのか、太った男が窓越しにこちらを見ていた。静脈の浮いた青い顔、黄色いビー玉のような眼、剥いた口から垂れる唾液、窓に押し当てた手が血でべっとりと汚れていた。明らかに人間ではなかった。
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