第一章 11:00PM 城岩ドリームランド

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「いいか、『お化け屋敷の赤いペット』は、あの怖い話のカリスマ、伊奈川淳二先生の十八番、『赤い地下室』が元ネタになっているんだぞ。それを言うにことかいて、怖くない話だって?」  なーんだ、とさやかが小馬鹿にしたように目を細める。 「元ネタがあるんだ。じゃあ、そのナントカ先生の話が怖くないのね」  蜷川の顔がさっと紅潮した。 「きっ、君は、伊奈川先生を侮辱するのか!」  テーブルの端を握る蜷川の手が震えていた。  地方大学の雄、城岩大学の医学部は、指導陣、設備、学生、どれをとっても一流である。入学は至難の業だ。その医学部に首席で合格したほどの秀才が、端整な顔立ちを真っ赤に染めて激高していた。いつもクールな男が、こと伊奈川淳二の話になると我を忘れてしまう。
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