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「……もういい」蜷川が首を振った。「訊いた僕が馬鹿だった」
「待ちなさいよ。耕太が言いたいのはそういうことじゃないわよ」
隣に座っていたさやかが割って入った。
「雨宮耕太はあの程度の怖い話じゃビビッたりしない。退屈な落語を聞いてるようなものだ。評価できるのはせいぜい話し方ぐらいだ、そう言いたいのよ。ほら、これを見て」
隣から伸びたさやかの手が、耕太のTシャツの胸の辺りを引っ張った。
胸元に目を落とした耕太はぎょっとした。Tシャツには英文で「アイ・ラブ・テラー(恐怖)」という文字がプリントされていた。
蜷川が、ほう、という感じに顎を引いた。
「たしかに雨宮は、僕が怖い話をしている間、表情ひとつ変えてなかったな」
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