プロローグ とあるお化け屋敷で

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ここで止めたら何のために母親に嘘をついて、塾をさぼったのかわからない。それに今、逃げれば、カズヤはともかく、ヒロは明日クラス中に言いふらすだろう。肝試しを逃げ出したヘタレだと。それがマサトたちの耳に入ったりしたら――。 「よし! それでこそ男だ。さあ、行こうぜ」 三人は懐中電灯を手にしたカズヤを先頭に通路へ進んだ。 角を曲がると、裏口から差し込む月明かりが届かなくなり、辺りはすっかり闇に包まれた。少年は前を歩くカズヤの肘をつかみ、なるべく足下だけを見るようにした。床を這う光の輪を、空き缶や新聞紙、ガラス片などが通り過ぎていった。 「ほら、そこ――」 不意にカズヤが立ち止まり、懐中電灯を振った。
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