第三章 高島舞の逆襲

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 公園を出てすぐ電話して、今あったことを沢田陽子に話した。  「私は緑君のもとに戻った方がいいんじゃないでしょうか?」  「絶対に戻るな!」  有無を言わせぬ口調だった。  「緑はおまえを助けたいんだよ。なのに、おまえが戻っていっしょに警察に捕まったりしたら、その方があいつは立ち直れないよ」  駅に向かう途中、けたたましくサイレンを鳴らす救急車とパトカーにすれ違った。  「公園の三人は緑が口止めするだろうし、あとのこともあたしたちがなんとかする」  この日のことは瀬海には報告しなかった。瀬海に言うと、瀬海に悪気がなくても必ず事態が悪化するから。  本当は教えてやりたかった。瀬海は池工生を不良ばかりと決めつけているけど、本物のワルは君のそばに大勢いたよ、と。  真面目かそうでないかと聞かれたらおれは真面目ではないが、所詮は進学校の真面目な羊の群れの中にいるから目立って見えるだけのハンパな不良(ワル)だ。そんなことは分かっているから、自分の分をわきまえない背伸びした悪事を働いたことはないはずだ。そんなおれがなぜ暴走族のやばい連中に追われているのかさっぱり分からなかった。  おれにだって仲間はいる。でも、おれを守ろうとしてくれた仲間は一人残らず捕まって半殺しにされて、結局おれは一人で逃げ回っている。  ズボンのポケットの中のスマホが震えている。着信音でやつらに居場所がばれる危険があるから、バイブにしてあった。一番の仲間からの着信だった。
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