第三章 高島舞の逆襲

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 「無事か」  「おれ以外みんな捕まった」  無事を喜びあったおれたちは近くの工事現場で待ちあわせた。  夜中。近づく足音。仲間の顔を確認して、おれは物陰から飛び出した。  「無事でよかった」  「無事じゃねえよ!」  仲間が後ろから誰かに蹴り倒された。  「何も関係ないおれらがなんでおまえのせいでこんな目に遭わされるんだ? おまえなんてもう仲間でもなんでもねえから」  「案内ご苦労。もう行っていいぞ」  「失礼します」  仲間(元仲間か)は自分を蹴り倒した男に卑屈な笑いを浮かべて帰っていった。  元仲間と入れ違いに工事現場に爆音をとどろかせてバイクが何十台も入ってくるのを見て、おれは今までの人生で一番の恐怖を感じていた。  「おれは南静連合の駒門だ。おまえを殺(や)りに来た」  「駒門さんの名前はよく知ってますが、駒門さんに殺られるようなことは絶対してないです!」  「知ってると思うが、池工の生徒会長は南静連合の総長を兼ねてる。池工(うち)の生徒会長を手にかけようとしたやつに堂々とシャバを歩かれたら示しがつかないんでな。覚悟はいいか」  「ぬ、濡れ衣です!」  「おまえ、うちの生徒会長の名前知ってるか?」  「もちろんです。島田雄基さんです。お目にかかったことはないですが」  「島田さんは先月退学(いんたい)した。今は一年の原樹美絵だ」  おれはその場に座り込んだ。おれはただ、友達の彼氏を横取りした原樹美絵とかいう小悪魔をちょっと脅す手伝いをしてほしい、と自分の彼女に頼まれただけだ。原樹美絵も助けに入ってきた男も強くて、おれはひたすら逃げ回っていた。ほかの連中と違って、おれは一発も殴ってない。取り出したナイフも使う前に放り投げた。――でも、そんな言い訳が通じないことが分かっているおれは無言になるしかなかった。
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