第三章 高島舞の逆襲

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 あの事件から三日後の夜、陽子から電話があった。  「全部済んだから」  「済んだ?」  「緑は被害者ということで警察に捕まらずに済んだ。ただ、他校生徒と乱闘したという理由で学校は無期謹慎になった。夏休みなのに毎日登校して生徒指導室で勉強やらされてる」  「ケガは?」  「何針か縫ったみたいだけど、男の顔の傷は勲章だし、それにおまえが悪いわけじゃないから気にするな」  このことで私が負い目を感じる方が緑は嫌がると言いたいのだろう。そんなこといったって……。  「それからおまえをハメようとした連中だけど、男も女も関係なく全員きっちりカタにはめてやったから、もう一生おまえの前に現れることはないよ」  〈カタにはめる〉ってどういう意味ですか? 聞きたかったが、怖くて聞けなかった。聞けなかったが、何日かして私に会いに私の家の近くまで来た瀬海からこんな話を聞かされて、だいたいの意味は分かった。  「舞が突然退学してさ。何も聞いてなかったから驚いたよ。通信制高校で学びながら東京で仕事するらしい。きっと中学のとき樹美絵さんをいじめてたことが心残りだったんだよ。上京する前に君に謝って仲直りできてよかった。実はいいやつだったんだな。こんなことならもう少しやさしく接してやるんだったか――」  美談のように話す瀬海の言葉を、遠い国の出来事のように私は黙って聞いていた。
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