第四章 池工体育祭の死闘

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 9月になり2学期が始まった。  夏休み終盤、瀬海に彼の家に遊びに来ないかと誘われたが断った。下心からではなく母や彩湖に会ってほしいということだったが、そういうのはもっと親しくなってからではないだろうか? もっともこの頃は瀬海とこれ以上親しくなれるかどうかかなり怪しくなってきた気がしないでもない。  昼休みや放課後は生徒会長らしく生徒会室にいる。生徒会の仕事もあるが、陽子たちと話すのが楽しい。〈陽子たち〉と書いたのは、陽子はたいてい池工レディースの部下を一人二人連れてくるからだ。女子会というのだろうか、恋人の瀬海と話すのとは全然違った気楽な楽しさがある。まあ、話が楽しいといっても先生たちには聞かせられない話ばかりだけれど。  駒門や幸原は全然来ない。夏休みの生徒会応援のときみたいに、ここぞというときに頼りになる人たちらしい。  生徒会の取り急ぎの懸案は秋の体育祭の種目決め。工業高校で男女比が偏っているから、これが意外と難しい。どうしても個人競技中心にならざるを得ない。  それにしても――。生徒会室は校舎の裏側にあるから仕方ないのかもしれないが、昼休みだろうが放課後だろうがいつ見ても窓のすぐ向こう側にタバコを吸ってる人たちが見える。  「せめて見えないところで吸えばいいのに」  「そうしよう」  陽子の返事が〈そうだな〉ではなかったことに、そのとき気づかなければいけなかった。私は軽い気持ちで言ったのだ。あんなおおごとになるなんて夢にも思わなかったから!
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