第四章 池工体育祭の死闘

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 次の日、駒門と幸原が現れた。彼らは話し合いに来たのではなく、私の視界にタバコを吸ってる人がいるたびにときには乱暴に彼ら(または彼女ら)を排除した。もちろん陽子も駒門も幸原も私の前では吸わなかった。  ここに、池工新不文律〈生徒会長から見えるところでタバコを吸うべからず〉が誕生した。不文律を破ると駒門や幸原が飛んでくる。ほどなくして校内でタバコを吸う者を見かけることはまったくなくなった。  ――のはいいが、校内でタバコを吸ってた人たち(つまりほぼ全校生徒)から私は恨まれてるのではないだろうか。私は本気で心配になった。  「最初が肝心だから」  と陽子は言う。  「多少理不尽なやり方でも、あの生徒会長には逆らうなって思わせとかないと、あとが面倒になるよ」  陽子の言いたいことは分かる。やさしいだけの先生のクラスが崩壊していくのを小学校でも中学校でもよく見てきたから。  「ちょうどいいや。今度の体育祭で新生徒会長の恐ろしさを見せつけてやるとするか」  今日のお昼はマックにしようという感じで陽子が言ったが、今度は何をやらされるんだろうと私は戦々恐々となった。  教室では緑が一学期と同じように接してくるから正直ほっとした。私と瀬海がまだ一線を越えてないことを陽子から聞いて、積極的に言い寄ってくるのではないかと覚悟していたが、今はそんなうぬぼれていた自分が恥ずかしくて仕方がない。  行き帰りの電車の十分間ずつ一緒にいられるだけだけど、瀬海とも仲良く話せている。夏休みにもっと仲良くなりたかったと瀬海はなんだか残念そうだったけど。
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