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森本和夫が、その店を見つけたのは、梅雨らしい、どんより曇った夜……
へこんだ心を元に戻そうと、付近をぶらぶらしていた時だった。
八丁目の裏に、ちょっとした通りを見付けた。
入り口には、特に何も書いてなかった。
道幅は、2人ほどしか通れない感じだったが、なかなか雰囲気がありそうだった。
スマホを使って地図検索してみたが、そんな通りは出てなかった。
彼は、「ま、いいか……」と、何やらウキウキ気分で歩いていった。
「店っぽいのは何軒かあるけど……みんな閉まってるな……」
その通りの中程に――
『ほんやら堂』
――という、地味で古ぼけた店があった。
中は、ほのかな灯りがあるのだが、店員の姿はなかった。
「入って声をかければ、出てくるかも……」
と、戸を開けて入っていった。
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