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我が儘をぶつけるように一方的な告白をし、最後だけはやけに緊張した声で言う。
誰かに告白されるなんて初めてだし、ましてや相手が苦手な金髪男子なんて。
頭が追いつかない私は、目を合わせないまま声を絞り出した。
「………き、金髪、好きじゃない、から、やだ………」
ぼそぼそとそう言った私に、瀬名は何も言わない。
諦めてくれただろうか。いや、そもそも本気かも分からない。まさか、思い通りにならなかった事にむかついて、明日からいじめが始まったりしないだろうか。
私の慎ましい高校生活が…。
泣きたくなる気持ちを抑えていたところに、小さな呟きが耳に届く。
「金髪が好きじゃないって事は、俺個人のことは嫌いじゃないって事…?」
はっと顔を上げると、顔色は赤いまま、真剣な表情をした瀬名と目が合う。そんな顔、クラスメートがいる所ではした事ないくせに。
気恥ずかしさが抑えられない私は、慌てて違うと否定した。
「金髪じゃなくなったら付き合ってくれる!?」
「知らない!ていうかいい加減放せ!」
「ねぇ!黒髪になったら付き合ってくれるの!?ねぇ!灯果!」
胸を突き飛ばしてやっと振り払い、部屋に向かおうとした私の背に、思いがけなかった一言。
なんで名前覚えてんの!
「知らないってば!ていうか下の名前で呼ぶな!」
耳まで熱くなるのを感じながら、その後は振り返らずに部屋へ駆け戻った。ドリンクを取ってくると出ていったはずなのに、手ぶらで帰ってきて、かつ顔を赤くしていた私に真奈は訝しんでいたけど、なんでもないと嘘をついた。
頭痛は治ったけど、今度はどきどきしすぎて心臓が痛い。
それもこれも、全部あいつの戯言のせいだ!
少し遅れて部屋にやって来た瀬名の姿を見ないようにしつつ、最後まで親睦会に参加した私は、終わると早々に真奈と帰路を辿った。帰り道、真奈に何かあった?と繰り返し聞かれたけど、繰り返しなんでもないと答えた。
あの金髪ヤンキーにコクられた、なんて、信じられないに決まっている。
けどやっぱり、帰るまでも、帰ってからも熱は冷めてくれなくて、あいつに触れられた額も手首も熱いままだった。
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