第1章

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ーーーーー その奇妙な店は、大都会の真ん中にある。 少し古びた小さなバー。 白髪混じりの壮年の男性が、眼鏡をしながら今日もグラスを磨く。 が、その客はほとんどこない。 人通りも多く、看板だってある。 カクテルの味だって、有名店に負けていない。 されど、お客は来ない。 その理由は簡単。 このバーは、午後二時から四時の二時間しか開いていないから。 ほとんどの人が、まだ仕事をしている時間。 それも、仕事を終わらせるために一番働いている時間。 そんな時間にオフィス街でお酒を呑もうという人がほとんどいないから。 でも、そんな奇妙なお店にも、時折お客がやってくる。 やってくるお客は、仕事に疲れた人ばかり。 そんな彼等に、店のマスターは一喝して、最後には栄養ドリンクを手渡して送り出す。 そして、そんなマスターを咎めるように、一匹の黒猫が今日も鳴いた。 ーーーーー
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