2人が本棚に入れています
本棚に追加
「実は、会社をクビになって……」
さっきまでの勢いはどこへやら。
うつむきながら話すその姿は、小動物の如く弱々しい。
「新卒で入って二十年、毎日真面目に勤めていたのに、突然のリストラですよ。
まだ妻には言えず、職安通いを続けていますが、それも雇用保険が切れる来月までが限度です。
はぁ、ほんとにどうしたらいいんでしょうね。
子供だって、まだまだこれからお金がかかるのに……」
ふ~ん、このオジサン、仕事を失ったわけね。
「どうしたらいい!か、そんなの簡単だ」
「え?」
「今すぐ家に帰って奥さんに事情話しな。
んでもって、これからを話し合うんだな」
「そんな、それが出来たら苦労は……」
「だまらっしゃい!
夫婦間に隠し事なんてしてもしかたねぇだろ?
健やかな時も、苦しい時も、夫婦であること誓ったんだろ?
なら、あんた一人であ~だこ~だと悩んでても仕方あるめぇ!」
「でも、その結果、離婚にでもなったら……」
「なら仕方ねぇ。
それが話し合いの結果なら、素直に受け止めな。
もともと、あんたはリストラした会社が悪いとしか見てねぇみたいだが、もちろん雇用を維持できねぇ会社も悪い!
が、厳しい事言うがよ。
あんたを切っても会社は困らないと思ったから切ったんだよ。
つまり、あんたの頑張りは、会社からみてまだまだだったってことだ」
最初のコメントを投稿しよう!