わたしの髪の毛が抜けはじめたころ

わたしの髪の毛が抜けはじめたころ

あなたの髪はいつまでも若々しく

出会ったあのころと同じように

黒々としたせみろんぐへあーで

あなたは

まるであどけない少女のようにえくぼを凹ませながら

どんどんと抜けていくわたしの髪の毛を

しょうがないね

と明るくばいばいしておりました

わたしの髪の毛が抜けるのが早いのか

あなたが魔女のように若々しい姿を保っているのか

真相はわかりませんが

あなたの元気に申すことには

わたしの髪の毛の抜けるのは

人よりちょっと早いらしく

あなたはこうもおっしゃるのです

他の人は

一気にどばあっとぬけるらしいの

そしてたいそう苦しむそうよ

あなたの髪の毛は

人より早く抜けているかもしれないけれど

ほら今も

せいめいりょくとうるおいをみなぎらせて

ひっしに抜けまいとがんばっているじゃあないの

それに

若々しい細胞と養分を先っぽまでたくわえこんだ

新たなうぶ毛もうぶ声を上げているじゃあないの

その言葉に返すわたしのひとことは

そんなに強い薬じゃなかったから

そんなに抜けなかったのかもね

と

そのたったひとことを

さらっと言っただけでした