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リメラの視界共有の魔法を借りることが出来れば、この村のどこかにいるはずのハルミを見つけることができるかもしれない、という算段を立てていた。
少なくとも、シェリアの魔法よりは可能性が高いはずだ。
しかし、彼女に魔法を使って貰うことがどれほど難しいことか、理解していない訳ではない。
リメラはシェリアを敵対視している。
異常とも言える敵意を持っているから、素直に応じてくれるとは考えにくい。
さらに言えば、酒場の中にいるリメラを外に連れ出す術がない。
不用意に近付けば、素性を明るみにされた挙句、王国兵士達によって取り押さえられてしまうだろう。
何か良い方法はないか。
この酒場からリメラのみを連れ出して、人目の付かない場所で事情を説明する方法はないか。
シェリアは目を瞑り、こめかみをトントンと指先で叩きながら、考え込んでいた。
「どこ? シェリアさんは誰を探していたの?」
タユの声が聞こえてくる。
今にして思えば、まだタユにはリメラのことを話していない。
それを説明しようとして、シェリアは動きを止めた。
リメラの本来の目的を思い出したからだ。
彼女は失踪したタレイユ=ホーキンスを見つけるために、王国の兵士達に付いてまわっている。
王国の兵士達の目的は、戦争で難民となってしまった者の救助、及び捜索だ。
彼女の魔法の特性もあり、捜索隊に付いていけばタユが見つかる可能性が高いと考えているのだろう。
兵士達の目的外であり、リメラの目的がタユという人間だった。
今ここでタユがふらっとリメラの目の前に現れたとしても、兵士達にはあまり関係ない。
失踪している貴族を見つけたといって多少のざわめきはあるだろうが、確保するほどの騒ぎにもならないだろう。
「タユくん」
「ん?」
シェリアは意を決して告げた。
「あそこにいる女の子を連れてきてちょうだい」
酒場の奥の方の席にちんまりと座っているリメラを指差し、タユにわかりやすいように丁寧に説明した。
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