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さて、ここから少しだけ筆者が介入するのを許してほしい。
竜兵衛を中心に展開したこの戦であるが、その視野の外ではどうなっていたのか。
後世に伝わる軍記には、竜兵衛が開いた道を、味方本隊が攻め入ったのだと記してある。
そして続けてあるには、竜兵衛の起こした行動は、敵の主力である中須賀隊をおびき出し、戦意を削ぎつつ食い止めるための陽動だったという。
つまり栗の実は、今回の戦闘では囮になっていたという事だ。とすると、栗の実を救出に来た際に見せたあの大号泣も、策の内だったのだろうか?
たしかに発想力の豊かさでは凡人以上と言われた彼ならありえそうな奇策だが、それが嘘か本当かなんてのは、今の我々に知るすべはないのが現実である。
それだけではない──と迷った末だが、これも付け加えさせていただきたい。
そもそも、この物語の主人公、忍見竜兵衛という一人の武将が実在していたのかも、正直に言えば定かではないのである。
世は津々浦々の群雄が一刻一刹那にしのぎを削り、今日の地図があすには使えぬ疾風怒濤の戦国時代。遺された品々の、なにが嘘でどれが真か、後世の我々に見分けることは極めて難しいことなのだ。
もしかしたらこの忍見竜兵衛の英雄譚も、先人が遊びで書いた戯作だったという可能性もなきにしもあらず。というわけだ。
ただ、そんな「嘘」みたいなお話がもしも本当にあったのなら──なんて考えるのは浪漫に満ちてはいないだろうか。
事実は小説よりも奇なり。とも言いますし、ありえなくもないですよね。
では長くなってしまったが、私の手元の資料をもとに、その後を彼がどう生きたかについて書いてから、この話はお終いとしよう。
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