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「私の為に、有難う、ごめんね……。でもね、私、隼人と離れるくらいなら、バレたって構わなかったよ。好きな人の為だったら」
美咲の言葉に、隼人は驚いた様子だったが、美咲が真剣であることが分かると、静かに頷いた。
美咲は笑顔に戻ると、「住所教えて?」とカバンからメモ帳とペンを取り出した。
――
学校へと戻ると、美咲は校長に深々と頭を下げた。校長は少々戸惑っていたものの、やがて彼女の熱意に押されると、「分かったよ」と口にした。
そして翌日、美咲は担任の後に続き、クラウスの中へと入って行った。もしや、また転校か? クラスメイト達がざわめくと、担任の一喝で一気に静まり返った。あまりの静けさに教師は咳ばらいをした後、美咲へと話を振る。
「今日は、美和男から大事な知らせがある」
美咲は深く礼をすると、クラスメイトも合わせるように頭を下げた。顔を上げ、美咲は本題に入る。
「実は、今までみんなに黙っていたことがありました。実は私、女なんだ」
クラス中に声が反響したような気がした。それくらい、美咲にとっては重大な発表だった。しかし、クラスメイトは話を聞いた瞬間ゲラゲラと手を叩いて笑いだす。
「んだよ、そんなことかよー急に改まって言うなよな」
「え?」
ぽかんと口を開けた。しかし、口々にクラスメイト達から出る言葉は、「見たら分かる」、「何となくそんな気がしていた」、「噂で聞いていた」と言った言葉ばかり。意外にも、美咲のことはクラスメイト皆、察していたのだ。
「じゃあ、どうして私と仲良くしてくれていたの?」
「だって、此処へそんな恰好して来たってことは、もう此処にやらかした頃のお前はいないんだろ? じゃあ、良いじゃん」
一人のクラスメイトが言うと、皆が頷いた。あまりに優しい人々に、思わず瞳が緩んでいた。
「良かったじゃんか」
隣から聞き覚えのある声がして、振り向くと、そこには本来いるはずの無い隼人がいた。クラスメイト達は、美咲を放って隼人へと駆け寄っていく。
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