2人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、何で急に転校なんてしたんだよ」
「まぁ、色々あってな。でも、最後にちょっと様子見に来たかったんだ。美咲の」
「んだよ、その顔でコイツ落そうってかぁ?」
クラスメイトの一人が茶化して言うと、美咲は頭を掻きながら言った。
「安心しな、もう落ちてるよ」
美咲の言葉を聞くと、少しの沈黙の後、クラスメイト達がヒューヒューと囃し立てた。
隼人は、「何言ってんだか」と言いながらも、まんざらでもなさそうに微笑んだ。
「でも、強くなって絶対いつか帰って来るから」
隼人が言うと、クラスは空気を読むかのように静まった。その代わりに、美咲が口を開く。
「大丈夫だよ。私の知ってる隼人は相当強い」
美咲が笑うと、「だな!」と、クラスメイトや担任も笑い声を上げた。
――
翌年、北方一等男子学園に一人の男子生徒が転校してきた。いや、帰って来たの方が正しいだろう。
皆が帰宅するその頃、少したくましくなった彼は、彼女のいる教室へと向かっていた。すると、そこには驚くことに、真っ白なセーラー服に身を包む黒髪の女生徒がいた。
「美咲」
声をかけて肩を掴んだが、振り返ったその姿は明らかに違う男子の顔だった。もしや、思った時には既に遅い。
「だっせーぞ隼人!」
机の下に隠れていたクラスメイト達が次々に立ち上がった。
「お前等! 久々に会ってそう言うことするかね!?」
「仕方ないじゃん。今年の文化祭、女装するんだからさ」
「それを先に言えよな。全く」
怒る彼の下へ、髪の毛が肩まで伸びた彼女が忍び寄った。そして、真後ろから大声で声をかける。
「おい!!」
「なんだよ!! ……って美咲!」
久々の彼の姿に彼女は微笑むと、首を傾げながら言った。
「おかえり、隼人」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!