奇妙な店は

2/3
前へ
/8ページ
次へ
その奇妙な店は、私の店のとなりにある。 …あるはずなのだが、今まで一度も入り口を見たことがない。 さて、私の思うところを説明する前に少しばかり背景をお話しよう。 私の店は喫茶店だ。 最近はカフェと称されることが多いようだが…まあそれはさておき。 とある小さな町のメインストリートとなるセピアセンター街という商店街の一角に構えていて、創業30年以上になる。 月日の流れとは早いものだ。 常連客はがっちり掴んでいるから、経営自体に焦りはない。 カウンターだけの小さな喫茶。 メニューもコーヒー関係の数種類。 軽食はモーニングが11時まで。 それ以外はお茶請けにクッキーなどの焼き菓子を少々手作りしている。 店内に有線で流れるのは私の好みだが、ジャズだ。 色々な楽器が奏でる音色は心が和む。 店にくるとまず有線のスイッチに手を伸ばす。 そうして自分のコーヒーを入れてみて、味を確かめながら体調の良し悪しを舌に聞くのだ。 店内の準備が終われば、店外の掃除。 外に出て、その日初めて確かめるのはとなりの店の様子。 看板はあるのだ。 店に到着したときは出ていないのだから、私が店内で開店準備をしている間に出されるのだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加