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その奇妙な店は、私の店のとなりにある。
…あるはずなのだが、今まで一度も入り口を見たことがない。
さて、私の思うところを説明する前に少しばかり背景をお話しよう。
私の店は喫茶店だ。
最近はカフェと称されることが多いようだが…まあそれはさておき。
とある小さな町のメインストリートとなるセピアセンター街という商店街の一角に構えていて、創業30年以上になる。
月日の流れとは早いものだ。
常連客はがっちり掴んでいるから、経営自体に焦りはない。
カウンターだけの小さな喫茶。
メニューもコーヒー関係の数種類。
軽食はモーニングが11時まで。
それ以外はお茶請けにクッキーなどの焼き菓子を少々手作りしている。
店内に有線で流れるのは私の好みだが、ジャズだ。
色々な楽器が奏でる音色は心が和む。
店にくるとまず有線のスイッチに手を伸ばす。
そうして自分のコーヒーを入れてみて、味を確かめながら体調の良し悪しを舌に聞くのだ。
店内の準備が終われば、店外の掃除。
外に出て、その日初めて確かめるのはとなりの店の様子。
看板はあるのだ。
店に到着したときは出ていないのだから、私が店内で開店準備をしている間に出されるのだろう。
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