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『古書店 なつめ』
古書店とあるからには古書を扱っているのだろうと推測できる。
しかし…
店内を確認もできないし、店主を見たこともない。
再度言うが、店舗に出入りするためのドアがない。
その店舗も、見える日と見えない日がある。
何とも奇妙な…本当に存在しているのかさえわからなくなる。
私の目がおかしいのか、記憶がおかしいのか。
見える日に入ってみればいいのでは、と思うかもしれないが店が見えてもドアがないから入れないのだ。
そういえば営業時間もわからない。
日没が訪れて自分の店の看板に明かりを灯そうと外へ出るついでに見える日は気にしてみるが、となりはの店内が明るくなっていたことはなかった。
日によって見えたり見えなかったりだから、当然いつからその店が存在するのかもわからない。
いつぞやうちの常連さんに尋ねてみたことがあったが、
「知らんねぇ…」
と首をかしげていた。
やっぱり私の目か、脳みそがどこかイカれているのかもしれない。
見える日から見えない日を数えたりして、パターン化も考えてはみたのだが…法則はこれといって見つからなかった。
「さてねぇ…気にならないわけじゃないんだが仕事もしないとなぁ」
独り言ちた私は短く息を吐くと、店内へと戻ったのだ。
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