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 次の日、朝礼で彼がクビになったと告げられた。私はひどく動揺した。  しかし、他の人たちは平然としていた。問題児がいなくなったみたいな雰囲気さえ漂っている。次第に私の中で怒りがこみ上げてくる。部長にもこの会社にも。なんで、誰もこのことをおかしいと思わないのだろうか。そう思ったら、いてもたってもいられず私は会社を飛び出した。 「柿崎!」  遠くから、部長の怒鳴り声と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。そして、またかという声も混ざる。 ――また?  私はその言葉を反芻した。  確信めいたものは何もない。でも、私は彼を追いかけないと何も始まらないと思った。    商店街を抜け、駅のロータリーのところで彼の背中を見つけた。走りに走った足は靴ズレができ、太ももの筋肉は痙攣していた。声を出そうとしても、呼吸が乱れてうまく出せない。  彼はどんどん遠くへと行ってしまう。    また、私は走った。彼の背中を追いかけ、走った。イロの失われた世界で走った。私の存在に気づいて欲しいと祈りながら。    ピーという笛の音と共に、ダーンというドアが閉まる音がした。そして、体はゆっくりと横へ進み始める。窓からの景色も横へスクロールされていく。 「どうしたんですか?」  彼は驚いた顔をして、私の前に立っていた。 「ちょっと話したいことがあって」 「それじゃあ、私の旅に付き合ってくれますか?」  私は頷く。  彼と私は電車の中にいた。それも、快速列車ではなく、普通列車である。彼が何処に向かっているかも訊くことなく隣に座った。 「部長怒っていませんでしたか?」  彼は笑いながら言った。
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