幻の店

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「どうぞ中へ」 店長の声にうながされ、おずおずといった感じで扉が開かれる。 そこに立っていたのは、スラリと背の高い男性。 青いシャツに黒いパンツ、ピカピカに磨き上げられたブランド物の靴。 左手首には高価で有名なブランドの時計。 左の人差し指には大きめのラピスラズリがはめられた指輪が一つ。 8等身のバランスのとれた身体。長い足。 すっきりとした顎のライン。 顔には髪と同じくらいに真っ黒なサングラス。 「こんな所に店なんかあったっけ?」 不信そうに呟く男性に店長が極上の笑みを向ける。 「いらっしゃいませ。 ここは選ばれた方しか来られない店『KAMI』でございます。 まずは扉を閉めて、奥のソファーでおくつろぎくださいませ」 扉のそばに控えていた店員が男性を奥へと案内する。 ピシッとした格好の店員に案内され、男性は訝しげな雰囲気をかもしだしながらも、ついていく。 通されたのは、大きなホテルのラウンジのような雰囲気の場所だった。 ほどよい弾力のソファーに腰をおろす。 「お飲み物は何がよろしいでしょうか。 ソフトドリンクからお酒までご用意できます」 丁寧 な店員の態度に少し気分を良くし、男性はコーヒーを頼む。 「かしこまりました。 コーヒー豆のご希望はございますか?」 その質問に男性は少しびっくりする。 「いや、なんでも。おまかせで」 店員は深々とお辞儀をすると静かにその場を離れてゆく。
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