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「はあ…っ…あっ…あっ」
ドロリとした熱い血が喉の渇きと腹を満たす。
我がフィアンセには劣るが歳は取っていれど、元が淑女のマダムの血はこの上ない芳香を漂わせグレイの舌を唸らせる。
生身のルナから血を吸い取ってしまわぬようにグレイ毎夜、ルナに変わる血を求めて居たのだ。
「ああっ…い、…伯爵…もう私っ…」
躰がビクビクと痙攣する。
激しく喘ぐマダムの胸をいじりながら首筋から唇を離すと、傷付いたそこを癒すようにグレイは舌で何度も撫でていた。
腹がたまれば何も感じぬ…
美味い血を味わえど、やはりルナとは明らかに違う。
漆黒の闇に戻った瞳で果てて息を切らすマダムを冷めた表情で見つめて口元を拭う。
たった一人。
やはりルナだけが俺にあの欲情を沸かせる…
知ってしまった快楽。
満たされた食欲とは別に、解消されぬ躰の欲。グレイは少し不満気な眼差しをマダムに向けた。
「マダム…あまりここに居ると公爵が心配しますよ…」
うっとりとしているマダムを抱き起こし穏やかな作り笑みを浮かべると優しく唇を重ねる。
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