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「旦那様はあれでもとても我慢していらっしゃるのですよ…それなのに奥様は…」
「だからやめてっ…私はあんな化物の奥様じゃないわっ」
あれのどこが我慢してるなんてっ…
私の方がっ…ずっと…
ずっと我慢してるわっ!
毎日あんなことされてっ…
噛み締めた唇が震える。
モーリスは涙を溜めて目の前の料理を睨むルナを見つめてふうっと息をついた。
「旦那様は吸血の際に以前、ルナ様が気を失われたことを酷く気にしております」
「――!…」
「ですから…またそうならぬようにルナ様が体力を付けて頂かなければ…」
そう言ったモーリスの脇をヒュッと何かがかすめた。
「モーリス…」
窓が風に揺れ、背後から低い声が響きモーリスの言葉を牽制する。
「余計なことを言うな…」
「旦那様っ…お早いお帰りで…」
黒いマントを翻し、姿を現した主人にモーリスは口をつぐんだ。
「もう少しバランスを考えて食事を与えろ」
睨むルナを無視して出されていた料理を眺める。
「これでは俺でも食欲が沸かん」
呆れ顔の主人にモーリスははい、と応える。
「少々度が過ぎました…」
白い皿に血の滴る山盛りのレバーが目に余る。
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