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「料理とは目で味わう物だ。色彩が悪ければどんなコックが作っても美味には感じん」
「はい、では緑と黄色い野菜でも足してみましょう」
そう答えたモーリスにルナは目を見開く。
グレイは黙って頷き返すと背中を向けた。
主人の立ち去る後ろ姿をモーリスは深いお辞儀で見送る。
「さて。では、ルナ様」
頭を上げるとモーリスはルナを振り返った。
「生がどうしても嫌ならば中華風のお料理に致しましょう…それならばお口も進みましょうから」
「……っ…それでも嫌っ」
ほほっと笑ったモーリスは、ルナの悪あがきには目もくれず、テーブルの上の料理を魔術で操りながら厨房へと運んでいく。
そして食べる物が何も無くなってしまった代わりにモーリスは葡萄色の飲み物を差し出した。
「こ、れは?…」
正直お腹はホントに空いている。
だが、モーリスの用意してくれる料理には毎回手が進まない。
一見、まともな物に見える飲み物でも、吸血鬼が準備したのなら、もしかして…
そんな疑いを持ちながらルナは恐る恐る尋ねた。
「ご安心くださいまし。それは普通のフルーツジュースでございます」
「…フルーツ?」
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